カラヤンとフルトヴェングラー (幻冬舎新書)



カラヤンとフルトヴェングラー (幻冬舎新書)
カラヤンとフルトヴェングラー (幻冬舎新書)

商品カテゴリ:アート,建築,デザイン
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双頭のドイツエートスが生んだ二人

 いくら名ジョッキーといえども、名馬に乗れなければその腕は振るえない。この本は、最高のオーケストラ、名声を手中に収めなければ最高の音楽を創造できない音楽家の宿命ゆえの欲望、という視点から俯瞰され、これまでの資料が整理されている。また、それゆえの明快さと迷解?さの二面性を感じる。芸術家として妥協出来ない美意識などの視点が抜け落ち、時に??と思わせる解釈も多い。しかし、事実関係において何点か重要な点を平易に要約している点は本書の長所といえよう。

 フルトヴェングラーがレコード技術の本質と音楽に与える影響を理解していたのは、録音に対する取り組みや論文からもうかがえる。しかし、ドイツ教養主義の本流の中で身体化された彼の文化資本は、彼の神秘性の根源であるとともに政治的無知さや新技術との不相性も宿命として背負った。一方、カラヤンは、新しい技術に対応できる完璧な音楽性をもって、明晰な合理性をもとにした音楽における機能美を追求した。ドイツ文化はロマン主義を生んだが、一方でバウハウスをうんだように、彼もまた演奏会のリハーサルを録音にあてるスタイルなど、クラッシック音楽のあり方に機能的な合理性を持たせ変質させた点において「時代の寵児」であった。

 フルトヴェングラーはドイツ音楽が伝統的な共同体から離れ、大衆消費社会に飲み込まれることを予見し半ば絶望していた。彼はカラヤンにそれを見出し、生きている間は自分の文化的実存をかけて彼を排斥したのだろう。カラヤンはその後、同じようにライバルを排斥したが、そこに「悲愴」な文化的実存などなく、「ビジネス」としての生き残りをかけた競争だけがあった。20世紀のドイツ音楽史の役者として、この2人の対比ほど劇的な存在はない。

 こうした風景を見るうえでの案内図としての本書の意味は認めたい。
お買い得な書

今年はカラヤン(Herbert von Karajan)生誕100周年。それにちなんでいるのであろう。

華麗なタイトルに惑わされてはいけない。
美しい音楽に隠されたドロドロとした人間模様、謀略、欲望、権力争い。
単なる音楽の本ではない。色恋沙汰が少ないだけでまるで昼メロのよう。
でも、オーケストラと楽曲の勉強にもなるお買い得な書。
この本をきっかけにして、いろいろなアルバムを聴いたり本を読んだりする人が増えるかも
様々なことをサラッと知るには良いでしょう

著名な3人の指揮者達の活躍した時代背景や、日本とは違う音楽を取り巻く環境。
それらをサラッと知るのに良い本だと思います。
同時にヨーロッパでは国家がこれほどまでに、文化や芸術を庇護しているのかと驚きます。
もちろんそれが政治的に利用されることにも繋がるのですが、
国や市民が守り育てて来たものの存在の大きさはある意味うらやましいです。


面白く読めました。が・・・

移動中や待ち時間など、手持ち無沙汰なときに1時間かそこらで手っ取り早く読める読み物としては楽しめました。
あくまでテレビのワイドショー的なゴシップ感覚で。ただ、それ以上のものではないように思います。

著者自ら取材をしたとか、原典にあたったとかいう一次資料の参照は皆無で、既刊本、
それも翻訳ものをカット&ペーストして隙間を著者の想像で埋めたという代物で、
到底ドキュメンタリーなどと呼べるものではないし、
小説のように創作された世界を描いているというわけでもない。

プロとしてこういうものを躊躇なく世に出すというのは、ある意味大変勇気のあることだと思います。
専門家や有識者が、自分の専門分野について一般向けに手軽に概説するといった
従来の新書の在り方に一石を投ずると言えなくもないかも知れません。

まあ、それなりに時間つぶしにはなったし、たかだか800円かそこらで売られているものに
あれこれ言っても仕方がないのかなってことで★2つ。
素人マニアの労作

カラヤンとフルトヴェングラーとの確執の物語。事実関係は、おおむね合っていると思われるが、プロローグの4行目には早くも誤りがあるし、その後もときどき気になる誤謬がある。それはまあ誤差の範囲内としよう。

しかし、内容は偏見に満ちていると言わざるを得ない。人物把握は実に単純で、権力志向のカラヤン、優柔不断でナイーヴなフルトヴェングラー、狂言回しのような奇人チェリビダッケは、自身の役柄に応じた思考・行動をとり続けることになっている。そして著者の評価は、カラヤンに厳しく、フルトヴェングラーに甘い。典型的な日本人クラシックマニアの思考形態から一歩も出ていないと思われる。また、登場人物の気持ちを勝手に忖度して自身の解釈を補強するような記述方法は、著者自身がエピローグで断っているものの、本書のあるべき性格になじまない。

立て続けに重量級の評伝を読んできた目からは、些かお粗末な筋書きの芝居のようにみえる。わかりやすい文章なので読みやすいが、文体はぶつ切りの蕎麦のようで、味わいはない。素人マニアの労作、といったところだろうか。




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