物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)



物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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「ひと」が動き、「ひと」が流される

 歴史は、「ひと」によって作られてきた。
 そして作られた流れは「ひと」を押し流してきた。
 雑多で強烈な歴史の「流れ」を目の当たりにしても、目をこらしてみれば、その流れの中心には必ず中心たるべき人が居ます。その時代を示すかのように。
 本書はそんな「歴史の流れの中心」を作ってきた、あるいはそれによって中心を流されてしまった「ひと」のなかから、イタリアを語るに不可欠の十人を取り上げ、それぞれの、歴史との関わり、人との関わりを解いていきます。
 同じ中公新書の『?の物語』シリーズを既に幾つか読んでいるのですが、その多くは「編年体」(年代毎の記述で、歴史教科書的な構成)です。本書は今述べたように「紀伝体」(「ひと」の物語を集めた構成)的であり、最初見た時は違和感があったのですが、読了後は構成に大納得でした。
 すばらしいのは、たっぷりとした「ひと」の物語を読んでいる感覚が残るにもかかわらず、非常にコンパクトな処です。これについては筆者もあとがきで、不要な部分を削りに削った、と書いています。「ひと」中心でありながら、無駄のない記述で歴史の流れも明らかにし、《イタリアの歴史を知ろうと考える読者》にとっては飽きることがありません。
 尤も、字ィばっかりなんで、「物語」を好まぬひとにとっては旅行案内書的使用に適しません。活字によって歴史的想像力が喚起されるということが余りない向きは、無理せず写真と絵がたっぷり貼られた旅行案内書を買いましょう。^^
あんまり面白くない

 今夏イタリア旅行に出かけるので、下のレビューを信じ、半ば義務的に通読した。しかし、正直退屈な部分の方が多かった。こちらの歴史的教養の不足にも一因があるのかも知れぬが、やたらと知らない皇帝、王族、教皇などの人名が出てきては、都市国家間での戦争や、国内での政争の記述ばかりが延々と続いていたような印象である。アッシジのフランチェスコやミケランジェロなど知っている名前が出てきた章は比較的楽しめたが、それでもその個人の伝記以外の時代背景の記述は単調で退屈な部分が多かった。
 最大の欠点は図版の少なさで、芸術作品や歴史的建造物を言葉だけで説明するのは無謀な事。又、本書のような人物中心の章立てにするのなら、肖像くらいは付けてくれないとイメージが湧きにくい。特にコジモ・ディ・メディチやミケランジェロ、カサノーヴァなんて容貌が大きな個性になってるんだから、まずは顔を見せてくれないとねえ、、、。

最高のガイドブック

イタリアを旅行する時は是非ともこの本を事前に読むことをお勧めします。イタリアの各都市は、町全体が博物館のような雰囲気をもっていて、初めのうちはその雰囲気に酔ってしまうのですが、いくらか時間が経過すると、各都市によって多少は違いますが結局は教会・古い建物・石畳の道の繰り返しでちょっと退屈してしまいます。

そこで、この本を事前に読むのです。本書の「歴史」=「物語」が実際に起きたその土地で登場人物やその当時の生活を想像しながら街を訪れれば、忘れられない旅の思い出ができる事でしょう。

実際に、私もこの本を読んでから、AssisiのSan Francesco教会へ旅行に行きました。建造物としての教会もすばらしかったですが、それ以上に心に残ったのは、聖者フランチェスコが実際にきていたボロ着です。ボロ着が展示されている前で、この本に書かれている彼の人生を想像している時間は最高の旅の思い出です。
「物語」としての「歴史」の復権

 中公新書「物語各国史」、イタリアの巻は西ローマ帝国の崩壊からカブールによる統一に至るまで、この国の1500年に及ぶ歩みを対象としています。皇帝フェデリーコ(フリードリッヒ2世)やコジモ・デ・メディチ、さらにはカサノーヴァなど、イタリア史の各時代を彩った著名人士10名を登場させ、かれらの生涯を通じて時代時代のパースペクティブを説き明かそうとしています。
 語り口は極めて平易であり、扱われている事案・事件の類もメジャーなものばかりですが、政治・経済・社会・文化の各分野を総合的な「ヴィジョン」として鳥瞰していく手法は見事というほかなく、久しぶりに歴史読書の楽しさを堪能できました。
 筆者によれば、もともとイタリア語では「歴史=物語」なのだそうです。しかるに昨今、歴史学はイデオロギーとミクロの実証主義が専横を極め、ストーリー性は影を潜めざるを得ない有様です。そうした中、本書は、いわば歴史の原点たるべき「過去の時間を物語によって秩序づけ、それを未来に向けて語り継ごうとした長い伝統」への回帰に向けた「手探りの試行」として、見事成功を収めたものと言えましょうか。
 歴史の楽しさを実感できるという観点から、特に若い人たちにおススメしたい一冊です。
読みやすい物語

 1933年生まれのグラムシ研究者が1991年に刊行した、330頁にわたるイタリア史の列伝風通史。著者が「物語としての歴史」(!)の復権のために試行錯誤し、しかも国民史という枠組みに批判的であること(各国史は「一つの便法」にすぎず、国民国家形成は歴史の目的ではない)は、「あとがき」から判明する。そのため本書では、中近世=国内分裂期のイタリア史が対象となり、5世紀前半ラヴェンナのローマ皇女ガラ・プラキディアの生涯を通じてゲルマン民族の大移動に伴う西ローマ帝国の解体が、11世紀後半カノッサの女伯マティルデの生涯を通じて叙任権闘争が、1200年前後アッシージの聖者フランチェスコの生涯を通じてカトリック教会の再編強化が、13世紀前半パレルモの「近代人」神聖ローマ皇帝フェデリーコ2世の生涯を通じて十字軍時代が、14世紀ナポリの作家ジョヴァンニ・ボッカチオの生涯を通じてペストを始めとする14世紀の危機が、15世紀フィレンツェの銀行家コジモ・デ・メディチの生涯を通じて都市国家間の対立とメディチ家支配が、15?16世紀ローマの彫刻家ミケランジェロ・ブオナルローティの生涯を通じてルネサンスが、17?18世紀トリーノのサヴォイア公・サルデーニャ国王ヴィットリオ・アメデーオ二世の生涯を通じて絶対主義集権国家の建設が、18世紀ヴェネツィアの天才色魔にしてボヘミアの司書ジャコモ・カサノーヴァの生涯を通じてナポレオン戦争によるヴェネツィア共和国の終焉が、19世紀ミラノの作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの生涯を通じてイタリアの統一が、物語られる。6?10世紀の空白、図表の不備、時期設定の是非に加えて、社会背景の説明にも気になる点があるが、地域・階層の多様性に留意した読みやすい本である。巻末に年表付き。




中央公論社
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