物語 北欧の歴史―モデル国家の生成 (中公新書)



物語 北欧の歴史―モデル国家の生成 (中公新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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一般教養としての知識は得られる本

 1928年に生まれ、北欧の大使館に勤務した経験を持つ、元宮内庁式部官・イスタンブール総領事が、1993年に刊行した、「主として歴史の主役たちを念頭に置いて執筆した」、「一般的な知的教養の一部としての北欧史」の略史。本書の対象地域である北欧とは、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノールウェー、アイスランドを指し、対象時期は800年頃のバイキング時代から1990年代初頭までである。10?11世紀頃にキリスト教化と国家形成を進めていた北欧三国は、1397年デンマーク主導でカルマル同盟を結ぶが、1523年にスウェーデンが同盟から分離し、バーサ朝の下で北方大戦役までバルト海の覇権を握った。この宗教改革と絶対王政の時代の後、ナポレオン戦争の過程で、スウェーデンはロシアにフィンランドを奪われ、ベルナドッテ朝の下でデンマークから、高度の自治権を認めてノールウェーを割譲させた。19世紀は政治的・経済的近代化の時代であり、また汎スカンジナビア主義の挫折とナショナリズムの高揚が見られた時期でもある。1905年領事制度をめぐってノールウェーがスウェーデンから、1917年ロシア革命の最中にロシアからフィンランドが、1944年アイスランドがナチス占領下のデンマークから独立した。20世紀の北欧は社会民主主義政権下での福祉国家化と「中立」政策(ただし戦後ノールウェー、デンマーク、アイスランドはNATOに加入。また、国連の活動には積極的に参加)によって特徴づけられ、モデル国家と見なされたが、冷戦後は環バルト海協力と共に、経済的理由による福祉国家の動揺、EUへの接近傾向が見られる。本書の内容は以上のようなものだが、正直言って事件史中心で英雄史観的な叙述であり、説明不足や主観的な評価が目立ち、叙述もあまり整理されていない。あくまでも一般教養としての知識を得るための本。
北欧世界を知る最良の入門書

著者自身「北欧各国史を三百頁に収めるのは乱暴」と告白しているように、北欧五ヶ国の歴史を一冊の新書にまとめた苦労は察して余りある。デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの諸王家が互いに血縁関係があったり、五ヶ国が複雑な関係を共有することに加え、周辺の大国に翻弄された歴史を持っていることから、ヨーロッパ史の基礎知識があると有利だろう。別の著者の『物語 バルト三国の歴史』も併読したが、最低でもイギリス、ドイツ、ロシアの歴史を知っておかないと北欧五ヶ国とバルト三国についての理解を深められないことが本書を読んで思い知らされた。本書は北欧世界を知る最良の入門書として評価できるとともに、最初の一歩でもある。さらにこの地域について理解を深めるためには、五ヶ国個別の研究とともに周辺諸国の知識を補っていく必要があるだろう。個人的にはデンマーク、スウェーデン、ノルウェーの各王朝の系統譜を付けてもらうと、より読みやすくなると思った。
知られざる国々の物語

中公新書の歴史物語シリーズの中でも特に読むに値するものです。日本ではあまり知られていないこの地方の歴史については入門書という役割が適当でしょう。記述は客観的で好感が持てます。内容もコンパクトにまとめ、難解な問題には触れていないため奥が深いとは言いがたいですが、誰にでも起こった出来事を理解させるのには十分です。話は古代から現代にまで至るため、多少表現などには無理もありますが、少なくとも私はこの本を読んで、改めて北欧諸国に関心を強める事が出来ました。更に詳しく知りたいという気持ちを与えてくれます。筆者が現地の駐在員を務めていた事もあり、信頼できると思います。コラムもなかなかサービス精神が伝わるものですね。
これから北欧について学ぼうとする入門者向けの書

 本書は、これから北欧について学ぼうとする人が簡単にその歴史を頭に入れるためのお手頃の1冊である。デンマーク・スウェーデンを中心にノルウェー、フィンランド、アイスランドまで、まさに北欧史の全体像をコンパクトに整理している。途中に挿入されているコラムなども、読者を飽きさせない工夫として、好感が持てるものである。ただ、こういう類の歴史書の常として、当該国々に興味がない人が読んでもつまらないし、逆に深く知ろうとするにはこの程度の新書本では物足りないところもあろう。例えば、北欧地域に観光等に行く前に読んでおくといった活用法に適しているのではないだろうか。



中央公論社
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